残暑お見舞い申し上げますです
結局ハボロイの日をスルーしてしまっただめっこが通りますよー
2日も経っておりますがやっぱりなにかしたいということで2日遅れで小ネタアップです
うちのマシノイドシリーズ設定なのでパラレルご注意ください
しっかし人様の設定には盛大に萌えるのに自分でやるとどうしてあんまり萌えないのでしょう…
6月祭りの没ネタ回収…というよりかは単にタイムアップでお蔵入りしてたやつです
拍手でいただいた台詞いただいてますありがとうございますv
曖昧な色×ないものねだり
ベッドにうつ伏せに横たわるハボックの隣。
きしりと寝台を軋ませて、ロイはゆっくりとそこに腰かけた。
ごくごく自然な動作でするり、と黒いシャツを捲り、手のひらを這わせる。
「…最初にお願いしたのは俺ですけどね」
目を凝らさないと分からないようなその箇所を探り当てると、慎重に開く。
「なにも2週間に一度巻かなくても…二・三ヶ月おきとかで十分っスよ?」
開いた中にあるそれをこれまた慎重に指でつまみ、きり、とひと巻き。
きちんと動いたことに満足してふ、と吐息をもらした。
「大佐?聞いてます?」
「ん。巻きすぎるとまずいか?」
「そんなこともない…と思いますけど」
――大佐。ちょっと、巻いてもらえません?
そういって少し眉を下げて微笑んだのは、ジャン・ハボックというマシノイドがロイ・マスタング大佐の家に来てから数ヶ月後のこと。
会ったその日にエナジィ切れ直前の彼のゼンマイを巻いたのはロイ自身で、それからハボックが自分で巻いている様子もなかった。
2週間なんてスパンでゼンマイを巻く必要がないのは二人とも重々承知のはず。
それでもこの、どこか静謐な空気を漂わせる儀式のような時間が、ロイには必要だった。
人にしか見えない体の中に、どう見ても機械にしか見えないゼンマイがあるというのは、やはりどこかしら違和感を伴う。
自分もマシノイドであることを棚に上げてロイはぼんやりと思った。
手足を失った人間のための機械鎧といったものも存在するが、まったく違う。人と見間違うほど精巧に作られたマシノイドであったとしても、やはり人とは違うのだとつきつけられているような気がするのだ。
自分はともかく、彼はこんなにも人間らしいのに。
「そんなに気になるなら中見りゃいいでしょうに」
「おまえは人に自分の身体を開けられいじりまわされて楽しいのか」
「楽しかないですがあんただったら別に構いませんよ。つーか人間も病気になったら手術だのなんだのしてるじゃないスか。あれと似たようなもんでしょ?」
「おまえは健康体だろう」
「まあそうっスけど」
そうして何事もなかったかのように目を閉じる青年に、ふいに衝撃を受ける。
なんだろう。この全幅の信頼は。
ゆっくりと彼の命の源ともいえるそれを手にしながら、ロイは静かに動揺した。
きりり、きりり、と彼の手の中でゼンマイが巻かれていく。
寝そべる形になっているハボックは、真剣にゼンマイを巻くロイに気づかれないように慎重に盗み見てから、小さく息をついた。
いやに真面目なその表情の下、いったい何を考えているのか――まあ、なんとなく分かるつもりでいるけれど。
そりゃ俺はあの人たちみたいに付き合い長いわけじゃないし?
常に彼に付き従って支える彼女や、ふいに彼の元を訪れて妻子自慢をしていく彼のように。
無条件の信頼を自分が受けられるなどといった虫のいいことを考えているわけではない。
それでもこればっかりは信じてもらいたい、とも思う。
運命、なんて陳腐な言葉を使いたいとは思わないが、自分には貴方だけしかないのだと、どうしたら信じてもらえるのだろうか。
だけど、そう思っている自分でさえ曖昧で不確かな理由では、彼は納得しないのだろうと結論付けて。
ゼンマイ仕掛けの青年はただ黙って彼に自分の身体を委ねていた。
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