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がっつり連載になりそうです

本誌の発売もうすぐですね
表紙を見た限りやっぱりエドたちの話なのかなー
軍部出ないかなー……(笑

拍手ありがとうございますーうれしい

つづきからに先日のつづきが入ってます
病院はぼろい(未満)です むしろ今回はハボック
パラレル&オリキャラ注意です

あと毎度のことですが仕事とか病気・怪我に対する記述は嘘八百ですごめんなさい
まったくなにも知らない…






自分のデスクで、ハボックは一人頭を抱えていた。
学校で学んでいた当時は、現場で書類と向き合う時間がこうも多いとは思っていなかった。

患者の状態を知るには、多くの情報が必要となる。
また、それに付随する書類の作成も多い。
ハボックの仕事も、患者のカルテを見ることはもちろん、一人一人にあわせたプログラムメニューの作成と実施したメニューの記録、小児の場合は保護者である両親への連絡と説明。担当医との打ち合わせと様々だ。
特にリハビリメニューの場合、たとえ病名は同じでも患部やそのひとの生活に合わせてメニューが組まれるため、ひとつとして同じメニューなどない。
また、病名は特定できてもその原因が分からなければ、過去のデータや個人的な横のネットワークで情報を仕入れ、適切なメニューを組む必要がある。

出来る限り患者とコミュニケーションをとりたいと思っているのに、如何せんその患者に係る書類仕事が多い。
さらに患者との対面によって感覚を掴んでいくハボックにとって、事前のプログラムは最大の苦手分野であるために、積まれた山はなかなか減らなかった。
それでも、自分がやらねば書類は減るどころか増えるばかりであることには違いなく。

「うーん」
「うんうんうるせーよ、ハボ」
「うるせ。書類は苦手なんだよ……っと」

話しながら肩の筋を痛めた男の子のリハビリプログラムを書き上げてようやく顔を上げると、同僚かつ友人であるハイマンス・ブレダが立っていた。
一般病棟の内科医である彼は、ハボックの学校時代の同期だ。学科は違ったが、総合演習だなんだので知り合い、なんとなくウマがあって一緒にいることも多かった。卒業してからはそれぞれ別の病院へと移って疎遠になっていたが、偶然この病院で再会し、今に至っている。
コーヒーの入った紙コップを手にしたブレダは、ハボックと視線があうとにやりと笑った。

「おまえ、あのマスタング先生に喧嘩ふっかけたってな」
「は?」
「一般病棟まで盛大に噂になってるぜ?」
「マジかよ……」

空いているデスクに腰掛けてコーヒーを啜りながら、数時間前の出来事をおもしろそうに言うブレダにため息をつく。

「で、実際のところは?」
「あー……患者に対する見解の相違?」
「おまえストレートだもんなあ」

そりゃあ捻くれたあの先生とはあわねえよ、とブレダはしみじみ頷いている。完全に他人事だ。

「他人事だからな」
「……何しに来たんですかブレさんは」
「マスタング先生にやられてふてくされてるだろうダチの様子を眺めに」

無言で投げたペンはあっけなくキャッチされて投げ返される。

「……優秀だよ、あの人は」

誰に聞かせるでもなく呟かれた友人の言葉に、ハボックは先ほどの彼の冷たい眼差しを思い出して顔を顰めた。

「いくら手術の腕がよくても、あれじゃ優秀とは言えないんじゃねえの?」
「――それだけじゃないさ」
「それだけじゃない?どこが?」
「ま、そのうち分かるぜ」

意味深な言葉だけを残してふらりと去っていく友人を渋面のまま見送って、ハボックは手元のカルテに目を落とした。
そこにあるのは、件の少年のもの。

怪我の後のリハビリには、本人の意思と努力が重要となってくる。
だが彼の担当医の言葉通り、患者の少年には回復しようとする意思が決定的なまでに欠けていた。
ハボック自身、マスタング医師に啖呵を切ってから少年と直接話してリハビリを奨めたが、取り付く島がまったくなく、一旦引き上げている。

「でもなあ…」

彼は、リハビリにとあてられた時間にはきちんとリハビリテーションルームにいたのだ。
ただいるだけで何かしようとするわけではないのが、リハビリが本当に必要ないと感じているわけではないのだろう。

何度も読み返したカルテに再度目をやる。
患者はウィル・ケプラー、13歳。
通学途中に車との接触事故で左足を負傷。
傷は神経まで達するものだったがロイ・マスタング医師による手術が無事成功。
現在は術後の影響もあり少し麻痺が残っているものの、今後のリハビリで問題なく動かせるようになるはずだ。
……一般的な生活を送る、という条件下であれば。

ハボックの目は、備考欄の上で止まる。


少年は、将来を嘱望された短距離ランナーだった。
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